アスベストについて

Ⅰ,アスベストとは何か?

アスベストとは天然に産出され、岩石から取り出される繊維状の鉱物です。また、含有する成分と構成の違いなどから6種類に分けられます。主に使用されているのは、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)、クリソタイル(白石綿)などの3種類です。その繊維の太さは髪の毛の5千分の1しかありません。あまりに小さいために肺の深くまで吸い込まれやすく、科学的に安定しているので分解されずに体内に留まり細胞に刺激を与え続けるのです。
アスベストは断熱性に優れている、吸音性・遮音性が高い、劣化しにくい(耐候性、耐薬品性が高い)、加工性が良い(柔軟性があり、吹きつけや他の材料への混入がし易い)、強度性が強い、絶縁性に優れている、防火性・耐火性に優れている、安価である、などの性質を沢山持っていることから【奇跡の鉱物】と呼ばれていました。しかし、今ではアスベストの粉塵を吸収すると肺がんや中皮腫の原因になる恐怖の物質、また15〜40年経ってから発病することから【静かな時限爆弾】と呼ばれています。


Ⅱ,アスベストはどのような場合に使われているのか?
  また、何のために使われているのか?

アスベストは古代から土器や布の素材として使われていました。数10年前からは建築材料として多く使われていました。耐火・準耐火建築としらければいけない鉄骨像等の火災時の熱による鉄骨変形防止のための耐火被覆材として使用されるのが最も一般的な使用法で、アスベスト含有建材として代表的な1つです。また、断熱性を求め、石油プラントなどの保温材やボイラーなどの配管・継ぎ目の保温のためなどに使用されてもいます。
機械室やボイラー室等、音または熱を発生する場所では吸音材や断熱材としてアスベストは内壁に吹き付けられています。しかし、この吹きつけアスベストは固定性が低く、劣化すると飛散しやすくなり、人間が吸収しやすい最も危険なアスベスト建築材料です。屋根や外壁、床ではアスベストが固定されていますので、平常時にはアスベストが飛散する恐れはないといえるでしょう。しかし、加工時や廃棄時に、粉塵として飛散する恐れがあります。また、災害により、建築物が倒壊した場合、吹きつけアスベストだけでなくアスベスト成形板等からもアスベストが飛散する恐れが高まると考えられるのです。


Ⅲ,今、関心が高いアスベスト問題とはどのようなことか?

アスベストは体内に吸収してから、持続的に細胞を蝕んでいくために30〜40年経ってから病気が発病します。よって、アスベストが最も多く使われていたのが丁度40年くらい前なので、今まさにアスベストが原因により死にいたる人が出てきているのです。これからも、アスベストによる患者は続々と出てくるでしょう。しかし、日本ではアスベストの対応が遅れています。予防原則の観点からは、製造、利用、廃棄の過程において、アスベストが全く飛散しないようにするという措置が講じられるべきですが、飛散を100%無くすことが技術的・経済的に困難である現実を直視すれば、アスベストの使用そのものを完全に禁止するほかないはずです。


Ⅳ,アスベストの代替としてどのようなものが考えられるか?

グラスウール
ガラス綿。綿状になったガラス繊維。石英ガラスウールは非常に細かい繊維状の石英ガラスで、上質の綿と同じような外観をしています。透明石英ガラスを原料としているため、極めて高純度で、耐熱性および耐薬品性に優れた製品で、断熱材・吸音材に用いる。
ロックウール
岩綿。ガラスや鉄鋼のくずを繊維状にしたものです。(玄武岩、鉄炉スラグなどに石灰などを混合し、高温をかけて溶解して形成する人造鉱物繊維)主成分は酸化ケイ素と酸化カルシウム。単繊維径は3〜10μm。断熱性・吸音性に優れる。
この2つが、発がん性がないとされ、アスベストの代替として考えられています。しかし、実際は若干ながら石綿を含有している場合があるので注意しなければいけません。また、製造や加工にあたっては絶対に粉塵に注意する必要があります。


Ⅴ,感想

アスベストは建築材料として、多くの優れた性質をもっています。しかし、その反面で癌(中皮腫や肺がん)などの原因にもなり、多くの人を苦しめ、死に追い込んでいます。アスベストは何より、長い潜伏期(15〜40年)があることに問題があります。潜伏期が長いとどうしても早期発見・早期治療ができずに手遅れになってしまうのです。


*参考文献*
アスベスト問題 岩波ブックレット 宮本憲一、川口清史、小幡範雄 編
 P.2 P.3 P.44 P.45 P.46 P.64
パーソナルカタカナ辞典  ガラスウール ロックウール 
石英ガラスウール http://www.irie.co.jp/pages/sekiei-glass.html
ロックウールhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A6%E3%83%BC%E3%83%AB